この機械は何か
Unitree Go2は、中国Unitree Robotics社の小型四足歩行ロボット(いわゆるロボット犬)である。16cmの段差踏破・最大40度の登坂・4D LiDAR対応をうたい、Go1の後継として2023年に登場した。ラインアップはAir・Pro・X・EDUに分かれ、機体は共通だがソフトウェア面の「開放度」がグレードで大きく異なる。純正アプリにはGPT(発表当初はGPT-3.5)を組み込んだ音声対話ペルソナ「BenBen」が載り、声で質問や指示ができる。ただしこれは会話機能であって、外部プログラムから機体を動かす開発口とは別物である。
接続の口
AI制御の観点では口は3層ある。第一に純正アプリのGPT音声で、これはクラウド任せの会話に閉じる。第二に公式SDK(unitree_sdk2)とROS2ブリッジ(unitree_ros2)で、CycloneDDSによる低レベル制御(関節トルク直接指定まで)ができるが、標準で開放されているのはEDUだけである。Air/ProでDDSを使うにはfirmwareにパッチを当てる必要があり、これは非公式領域になる。第三に、確立したOSSであるabizovnuralem/go2_ros2_sdk(1,000★超)が、ロボット純正のWebRTC口(アプリが使うのと同じ経路)を叩いてAir/Pro/EDUいずれもROS2化する。つまり最も現実的な購入グレードのAir/Proでも、このWebRTC経路を使えば状態取得と制御が実務レベルで成立する。firmware 1.1.15以降はWebRTC接続に機体固有のAES-128鍵が要る点に注意。
AIから動かすまでの道のり
最短はlpigeon/unitree-go2-mcp-serverを使う道である。これはMCPサーバーで、LLMが解釈した自然言語をROS2命令へ変換し、直進・旋回の速度指定から、立ち上がり・お手・ジャンプ・ダンスといった定型動作までを呼べる。前提はUbuntu 20.04/22.04・ROS2(Humble推奨)・Unitree ROS2セットアップ済みの環境で、Air/ProならまずWebRTC経由のROS2ブリッジを立ててからMCPを噛ませる構成になる。MCP自体は86★・単独開発と成熟度は高くないため、動作は自分で検証しながら組む前提が要る。EDUを買えば公式SDKで同じことをより直接に、より低レベルまでできる。
できること・できないこと
できるのは、LLMを司令塔にした移動・定型動作・センサー状態の取得と、それらを回すフィードバックループである。一方で重大な留意点がセキュリティにある。2025年9月にはBluetooth圏内の他機へ自己増殖しうる「UniPwn」、初代Go1では製造元が遠隔操作しうるCloudSailバックドア(CVE-2025-2894として登録)が報じられた。さらに2026年2月に公開されたboschkoの調査はGo2のDDS実装の未認証RCE(CVE-2026-27509)を実証しており、認証なしでDDSドメインに参加し、rootで任意Pythonを実行させられる。UnitreeはV1.1.13でモバイル側(CVE-2026-27510)を塞いだが、DDSのRCEはEDUの用途上「塞がない」方針とされる。要は、開発口を開けるほど攻撃面も開く構造で、外部到達可能なネットワークに素で置くのは避けるべきである。警備・巡回用途は物理的には歩けるが、常時無人自律というより人の監視付き・限定区画での運用が現実的で、この脆弱性を踏まえた隔離設計が前提になる。
組み合わせのヒント
WebRTC/ROS2で状態が取れるので、/ratingでいうフィードバックループ型の使い方に向く。屋内の定点監視カメラ/devices/tapo-c200と併せて「異常を見たらGo2が現地へ向かう」導線や、卓上ロボットアーム/devices/mycobot-280との役割分担(移動はGo2・把持はアーム)が組みやすい。ネットワークは必ず制御用VLANに隔離し、インターネットへ直接晒さないこと。また日本での入手は並行輸入が中心のため、Wi-Fi/Bluetoothを積む機体として技適マークの有無を購入前に確認したい。